私がゲーム内結婚したのは彼女が初めてだった。
リアルでは学生であるものの、好きな人が出来たことが無く、帰宅してはずっとラグナロクオンラインを起動してはソロで金策効率のいい平地で狩りをしていた。
中学生から始めたこのゲームはもうすぐ9周年を迎えるらしい。
人見知りがゆえにパーティープレイが苦手で、毎日チェイサーで時計塔に篭もる毎日を送っていた。
メインは退魔ハイプリーストで、名も無き島でレベリングを毎日1時間しているくらい。
ギルドも入らず、臨時にも入らずだった。
朝早めに起きて人が少ないタイミングでプレイしているために人がいても3人とかであった。
ある日ちょこちょこ見かけるハイプリーストに耳打ちで話し掛けられた。
この時衣装装備も無いので狩り装備が丸見えで、何かと思ったら「その頭装備、強いですよね!」だった。
よくあるので「使いやすいですよ、オススメです。」と言って一度落ちた。会話したくないので。
そうしたら翌日、wisで「おはようございます。昨日は不躾にすみませんでした。私とお友達になってくれませんか?」の内容が届いた。
あまりにもビックリしてなにか返そうと精一杯打った文字が「いやです。」。
その日はwisはそのまま途切れ、やっちゃったなーと思いつつまあいいやとそのまま学校に行くことにした。
しかしこの次の日から毎日のように見かける度挨拶が飛んでくるようになり、無視するのが苦手なので一々返していたら少しづつ趣味が合うことに気付き、いつの間にかただの1時間のレベリングが彼女とのコミュニケーションのためになりつつあるのだった。
段々と、一緒に居てみたいなと思うようになっていたので最初の非礼をお詫びをして、自分からお友達になって欲しいと頼んでみた。
彼女は、「?もうお友達じゃないんですか!?え!?」と想定外の反応を示した。
わたしはそれが嬉しくて、少し涙ぐみながらありがとうと、ぽつりと返した。
これが彼女との馴れ初めのようなもの。
その後、自分のキャラをお互いに見せあった。
お互い金策キャラがシーフ系だったからか、似たような狩場で認識してないだけで何度も遭遇していたことが判明。
2人で狩りを色んな所でするようになった。イベントやレベル上げ、金策など何するにしても一緒だった。
それから7年後、同性婚が実装された。
交流は続き、お互い居ないと困る存在になっていて出会うきっかけになったROでの結婚は憧れだった。
お互い女キャラしか持っていなかったというのもあってなんやかんやで結婚をしたことが無かったのだ。
憧れの結婚、結婚スキルなんぞもちろん使ったことも無い、養子も作ったことが実はない!
なので実装されたと聞いた時は浮き足立って何時にする!?衣装何つけよう!等と言い合いったりしてそれはもう楽しみにしていた。
人のいない深夜にお互いのメインキャラであるあの時のハイプリーストだったアークビショップで、純白な乙女のあこがれの塊のようなウェディングドレスで、誰の邪魔もない2人だけで結婚式を挙げた。
「7年越しに叶ったね、キレイだよ。私の可愛い彼女。」
「そうだね、そっちも綺麗じゃん、大好きだよ。」
お互いウェディングドレスを着て、隣に居て、お互いの顔を見ながら、自分たちの指輪を見合って………
あんまりにも幸せそうな顔ではにかんでて、なんだかもう、幸せが込み上げてきて…
「なんで泣いてるの〜?笑ってよぉ」
「だって…夢がひとつ叶って…目の前に君がいるのが更に嬉しくて…」
「もぉ〜私どこにも行かないから!ほら泣かないの、笑おうよ〜」
「う………ん、えへへ」
「わたしね、ゲーム内結婚したこと無かったから、スキル使ってみたくてさ。いつも君が仕事で家を出ていく時に毎日思ってたんだ。」
「!それもしかして」
『あなたに会いたい』